美しくて歪んだ世界の子どもたちの小説 「琥珀のまたたき」小川洋子
個人的に、ちょっともやっとする小説でした。昨今、子供関連の悲しいニュースが多いせいでしょうか。
以下ネタバレありです。
人里離れたお屋敷で、母親に「軟禁」された3兄弟のお話です。
外から見たら「軟禁」なのでしょうが、その閉ざされた世界で3人は母親と、彼らなりに幸せに暮らしていました。
でもその生活が段々と崩れていくんですよね。
壁に貼った絵が剥がれたり、オルガンの音がどんどん出なくなってしまったり、3人の服がサイズアウトしていくところに、そのどうしようもない時間の流れが表れていて、なんとも切ない気持ちにさせられます。
最終的には、成長した子たちがふとした拍子に外の世界と繋がって、彼らの世界は終わるのですが、2番目の「琥珀」は、長い時間が経った後、物理的に屋敷から出た後でも、その世界から抜け出せないでいます。
本当にね、この子たちの幸せって、どういうものだったんでしょうね。屋敷で過ごしてた時間は不幸ではなかったのかもしれないけど、でも、普通に外界と接触があったら、選べる道はいくらでもあったはず。その道を奪ったのだから、「ママ」はやっぱり親としてよろしくないですよね…。「ママ」自身、中身子どものまま育ってるだけだったんだろうなあ。
内容を改めて考えると悲しくなってしまいます…。
瑪瑙は好奇心で「壁」の外に出て、たまたま見つかっちゃったのでまだ仕方ないかなという感じがしますが、オパールが出て行ってしまったのはどうしてなんでしょう。一番年長で、外の世界の記憶もいくらか持ってる状態で、ママや弟たちの面倒を見るのはもうつらかったのかな。家族を愛しながらも憎んでいたような感じもしました。よろず屋ジョーに出会って、彼女は自分の道を進むことを選んだんでしょう。
美しくて儚くて、歪んだ優しい世界でした。
自分の中で消化するには時間がかかりそうです。